[神奈川県高校総体]“考える力”を積み重ねて、桐蔭学園が創部初の総体V 「判断することで責任も生まれ、成長につながる」(蓮見理志監督インタビュー)

2025年5月6日
令和7年度 第14回神奈川県高等学校総合体育大会女子サッカー大会 決勝
湘南学院 2(1PK3)2 桐蔭学園
得点:[湘南学院]髙村芹奈(17分、55分)、[桐蔭学園]松山莉子(38分)、松澤実来(65分)

5月6日、神奈川県高校総体の決勝が保土ヶ谷公園サッカー場で行われ、桐蔭学園が湘南学院とのPK戦を制して初優勝。創部8年目で、ついに頂点に立った。

やりたいサッカーを表現 勝負どころでは粘りを発揮

桐蔭学園は今年2月の県新人戦で初優勝を飾っているが、高校総体ではこれが初めての決勝進出。雨が降りしきるなかでも落ち着いてボールを動かし、攻撃の糸口を探っていった。

決定機を何度か作りながらも、相手GKの好セーブに阻まれる場面が続く。自分たちのペースで試合を進める時間帯も多くあった一方で、二度にわたってリードを許す苦しい展開となる。それでもセットプレーなどから粘り強く追いつき、勝負の行方はPK戦に委ねられた。

準決勝に続いて臨んだPK戦では、GKのシュートストップに加え、キッカー全員が成功。創部8年目のチームが、高校総体で初のタイトルをつかみ取った。

チームの立ち上げから指導を続ける蓮見理志監督は、試合を次のように振り返る。

「自分たちのやりたいサッカー、目指しているサッカーは結構できていました。相手が同サイドに固めてくることはわかっていたので、そこをいかに外して逆サイドに展開出来るか。ボールを動かしながらサッカーが出来たと思います。

あとは、点を取るところの質が課題かなと思っています。でもしっかりゴールを決め切って、粘り強く同点に追いつけたのは、彼女たちの力だと本当に思っています。底力がすごくついた。この大会を通して、星槎(星槎国際湘南)に勝ったり(準決勝でPK勝ち)、そういうことも自信になっていると思います。最後まで諦めずにやってくれたのは、本当にすごく良かった。選手たちがよく頑張ったと思ってます」

先輩たちの想いと歴史を重ねて、みんなで獲ったタイトル

桐蔭学園がサッカー部を立ち上げた初年度、初めて出場した公式戦では、わずか2試合で50失点を喫したという。私立とはいえ、強豪校のような特待制度があるわけではない。「桐蔭のサッカーをやりたい」と集まってきた選手たちと、ゼロからのスタートだった。そんなチームを育ててきた蓮見監督は、この日の勝利を「今の選手たちだけのものではない」と語る。

「先輩たちが築き上げてきて、いろんな経験をさせてくれた。今の子たちも1年生から試合に出て、先輩たちとともに関東高校女子サッカー秋季大会とか、いろんな経験をしてきた。だから“みんなで獲った”という感じです。この学年だけじゃなくて、過去の先輩たちが、いろんな苦労をしながら粘り強く、熱い気持ちでやってくれた。その積み重ねの結果かなと思ってます。先輩たちに、いい報告ができるんじゃないかなと思います」

自ら考える力と対話の積み重ねが、チームをつくる

攻守において核となる選手はいるものの、桐蔭学園は誰かひとりに頼るようなチームではない。一人ひとりがしっかり止めて、蹴って、判断できる。チームとして戦う意識と、それを実行できる技術がある。そんな印象を受けた筆者の言葉に対して、蓮見監督はこう語ってくれた。

「私も選手としてプレーしていたとき、あまり縛られるのが好きじゃなかったんです。だから練習メニューも自分たちで考えさせて、今で言う“ボトムアップ”みたいな感じで、どんどん自主的に判断して、のびのびプレーしてほしいという思いがあります。

自分で判断することで責任も生まれますし、人間的な成長につながることも意識しています。だからプレー一つひとつに迷いがないのでしょうし、普段からそういう意識でやってるところもあります。もちろん、私が微調整する部分はありますけど、自分で判断してやり切ること。それを尊重して信じて任せることが、自信につながると思っています。これはチームを立ち上げてからずっと同じ方針でやってきたことです。

彼女たちは選手ミーティングもすごく丁寧にやってるんです。自主自立の精神でずっとやってきたからこそ、それが実ってすごく嬉しいんじゃないでしょうか。自分たちで獲ったという実感があるんじゃないかなと思います。そう思ってくれることを一番大事にしたいと思ってやってきました。それがプレーに出てるのかもしれないし、チーム力につながっているのかもしれません。そうなっててほしいなと思っています」

ー例えばハーフタイムに戻ってきた時は選手同士で意見を出し合うのですか?

「そうですね、当然出し合います。ただ、どうしても私が判断しなきゃいけない場面もあります。そこはケースバイケースです。選手たちを尊重する時もあれば、まだ見切れてない部分も当然あるので、そこはバランスを見ながらです。

ただ、こちらが全部決めてしまわないようにしています。少しでも自分たちで判断してもらったり、“どう?”って私もよく聞くんです。考えさせながら、対話をしっかりして、チームづくりをしています」

―― 蓮見監督

育ててきた判断力を、ピッチで表現する桐蔭学園のサッカー

しっかりとボールをつなぎ、状況に応じて判断しながら相手を崩していく。蓮見監督が目指すのは、そんな“考えるサッカー”だ。自主自立の精神で積み上げてきた日々が、そのスタイルにもしっかりと表れている。試合で判断する力は、日頃の積み重ねから。練習中も、見えていない部分にはこまめに声をかけていくという。

「ボールを保持して状況判断してほしい。相手の嫌なところを突いていく。相手を見て、スペースだとか、味方や相手の動き、そこでしっかり顔を上げて判断する。どういったプレーをすれば崩していけるのか、その都度判断する。それは練習のところから意識してやっています。まだ見切れてないところがあれば、練習の段階からアドバイスしています。練習試合も毎週やってるので、そういう中で質を上げていきたいと思っています」

―― 蓮見監督
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